2011年8月4日木曜日

これからマッチングを受ける学生の皆さんへ

これは、大隅鹿屋病院1年次研修医が思うマッチングについてのアドバイスです。僕たちもどの病院がいいのか、どう選んだらいいのか悩みました。研修をスタートさせ、今思う研修病院の選び方、見たらいい点などをまとめたので参考に読んでください。

皆さんが、自分のベストの病院で研修できるのを心から願って、これから受けるマッチングを応援しています。

① まずは研修理念をチェック

 多くの病院が、研修医募集のホームページ(以下HP)を開設しています。その中にはどんな研修を受けられるか、先輩研修医、選択できる外病院などが書かれています。その中で研修理念を掲げている病院もあり、どこに力を入れている病院か、どんな研修医を望むのか書かれてます。しかし、実際にはどの病院もHPは似たり寄ったりで変わりばえはしません。HPでチェックして興味を持った病院、先輩から聞いて面白そうと思ったらまずは見学に行ってみてください。文章や写真からは見えなかった以下のことが見えてくると思います。

② 症例数、病院の規模をチェック

 あまりにも患者さんの数が多い病院では、患者さんの把握に明け暮れ、気が付くと次の科にローテーションなんてことが起こりえます。救急外来でも、外来患者さんの数が多いと、診断までできずそれぞれの科へ振り分け作業になってしまいます。

③ 病棟業務をチェック

 つい研修病院の指標の一つとしてERを考えている方も多いと思います。救急車が何台もきますとか、ERでこんなに手技が出来ますなどを重視しがちです。でも、救急での当直は多い病院でも月10回。病院によってシステムが違うと思いますが、月10回の夜以外はローテート中の科の病棟業務です。どんなに救急車が来ようとも、病棟での研修がうまくいっていない病院は、良い研修先とは言えないと思います。病棟で指導医の先生に適度に見守られながら責任を持ってやらせてもらえているか、先輩研修医に聞いてみてください。

④ 指導体制をチェック

 医師の世界は先輩から屋根瓦方式に技術・考え方などを教えてもらいます。中でも一つ上に当たる研修医2年目の先生は重要です。去年自分たちがつまづいたこと、改善したらよかった点が分かっていて、そのうえでアドバイスをくれます。いくら有名な医者20年目の先生がいても、実際に指導を受けるのは医者3~5年目の先生からです。有名な先生に指導を受けたくてというのは、入って「あれ?」ということになりかねないので注意してください。病院見学に行く時も、来年一つ上の先輩になるかもしれない研修医1年目、2年目の先生について見せてもらうのもいいと思います。有名な上の先生を見学させてもらっても、入って直接指導してくれることは少ないと思うからです。

⑤ 「良い」病院をチェック

 一概にいい病院と言っても、外科に行きたくて手術件数が多いのを「よい」とするとする人、救急が充実してるのが「良い」とする人、病院に求めることは様々です。先輩に話を聞くと、「よい」ことを教えてくれます。見学に行くと「よい」ところを見せてくれます。でも、自分で見て自分で判断しないと自分がよしとしてる病院を見分けられません。ぜひ、自分の目で見て決めてほしいと思います。

【大隅鹿屋病院一年目研修医のマッチング】

次に、今年の研修医1年目5人がどんなマッチングを受けたか、聞いてみます。
① 病院見学はいくつ行ったか?
② 実際にマッチング受けるにあたって重視した点は?
③ 実際にマッチング受けた数は?
④ どんな試験だったか?
⑤ マッチングを受けるにあたってアドバイスを。

1、 研修医Aの場合

マッチング

① 15から20くらい

②病因の雰囲気:自分もなじめそうかどうか。特に診療科を超えて仲がいいことと、初  めは採血も分からないので、看護師や技師にも遠慮なく聞ける雰囲気があるかどうか?上級の先生にも聞けるかどうか?
研修医の実力:研修医の個性によって、個々に大切に育てられていたから。研修医のペースで成長していたから。
研修医同士の仲がよさそうなこと:やっぱり1学年10人とか多すぎると、それなりにグループもできると思うので、3~8人ぐらいがよいと思っていた。
給料:あまりたくさん必要ないが、実家暮らしが長かったので、自立したかった。ただ大学病院の給料では少し厳しいと思った。
離島研修:特集回の僻地プログラムの中でも、徳之島でできると聞いていた。

③ 5病院(鹿屋、湘南鎌倉、千葉西、静岡徳洲会、静岡斉生会)
あと記念受験で自分の大学病院
国浪人のときは4月に内定貰ったので、他には受験しなかった。

④ 鹿屋:面接、論文(地域医療について、チーム医療について
湘南鎌倉;面接、筆記(英文和訳辞書可、急性腹症の疾患を挙げて鑑別でどうするか述べ、みたいなのが3時間ぐらいで何題かあった)
千葉西:面接、筆記(三角院長が作ったマークシート式問題。国試のような感じでもっと難しい問題が約100問。2時間か3時間ぐらいだった。正直難しいし、夏なので
差がつかないと思った。)
静岡徳洲会:面接、論文(徳洲会新聞を読んで感想をかけ)
静岡斉生会:面接、論文(地域医療についてみたいな題材で2つの問題から選んで1つ回答する感じだった)

⑤7,8月の時点で第1志望の希望病院まで決まっていることは少ないので、一応可能性のある病院はすべて受けておくべきと思った。そうすれば9月下旬か10月のマッチング中間発表以降まで悩むことができるから。
ただたくさん受けると、案外疲れるので、夏休みの勉強時間がとられる。
基本第2希望までには入れるので、病院決まっているなら2,3個で受ければ十分。
あと2年目では、湘南鎌倉は今年もフルマッチだろうと思って受験しなかったが、実際には定員に足りていなかった。案外穴場的に、定員に満たないところもあるので、可能性があれば遠慮せず受けたほうがよい。
面接はだいたいどの病院も聞かれることが同じなので、練習も兼ねて、大本命以前に、受験して慣れることも、人見しりの人には重要。
5年生であるならば、自由にいろんな病院を見学できる機会は、将来にわたってそんなにないので、見学したほうがよい。例えば、進路として考えていなくても、普通の市中病院から有名病院、他の大学病院まで見学するべき。普通の市中病院に行くと、こんなにやる気のない研修医ばかりなのかと感じたりなどと、とてもいい経験になった。
本命の病院で倍率もそれなりに高いようなら、2回以上見学に行って名前と顔を売っておいて損はないと思う。あと在籍する研修医には、去年のマッチング試験がどんな問題が出たか聞いておくべき。案外同じような問題が出た。毎年ある程度使いまわしてる可能性もある。

2、 研修医Bの場合

①病院見学数    10~15

②実際にマッチングを受けるにあたって重視した点
学生の立場から「良い」と判断するよりも、実際に自分が研修医として働いたときに「良い」と感じれるかどうか。当直の多さや手技の多さ、指導医の多さ、カンファレンスの多さなど学生の立場からすると魅了に感じるが、実際に研修医として働いたらと考えると、カンファレンスが多すぎると自分の仕事が出来なくなるし、医師が多すぎても手技の数が減るし、手技ばかり多くてもacademicな部分が弱くなるしと、それぞれの長所と短所の兼ね合いを最も考慮した。

③実際に受けた数 1つ

④どんな試験だったか。   小論文と面接

⑤アドバイス
 どの病院がベストと思うかは人によって違うので、自分がここだ!という病院を見つけることが大事。どの病院なら自分の目指す理想の医師像に近づけるか。国試の勉強などで忙しいとは思いますが、一生を左右するかもしれない大事な選択だと思いますので、どうぞ納得するまで悩んでください。

3、 研修医Cの場合

①病院見学はいくつ行ったか?
10カ所くらい。

②実際にマッチング受けるにあたって重視した点は?
まずは自分が初期研修で何をしたいのかを明確にすること。人によって目標が異なるはず。私は救急と内科をしっかり勉強したかった。
重視したのは指導体制。あと研修医が頑張れる環境かどうか。救急の体制。
研修医が自分でアセスメントをし、それに対するフィードバックがあるかを重視しました。
研修医を実際に指導するのは3、4年目の後期研修医であることが多い。つまり見学に行ったときにいる研修医。その人たちがどんな研修をしているかを見学時にチェックしておくことはとても大切。

③実際にマッチングを受けた数は?
1つのみ

④どんな試験だったか
4対1の面接と小論文。なぜこの病院を志望したか、3年目以降はどうするのか、何科になりたいのか、仕事をするうえで大切なことは何か、自分の長所短所、大学のサークルでの経験は今後活かせるか、などを聞かれた。

⑤マッチングを受けるにあたってアドバイスを。
6年生は国家試験の勉強もしないといけないし、時間が限られています。ただ闇雲に受けるのではなく、本当に行きたい病院にしぼって受けた方がいいと思います。そのためには5年生までに気になる病院の見学をすませておくことも大事だと思います。

4、 研修医Dの場合

①病院見学はいくつ行ったか?
 6箇所

②実際にマッチング受けるにあたって重視した点は?
 自分にあっていると思う病院。それは、2年間辛くてもやり通せる環境と、指導医の先生がいること、辛いときに支えてくれると思う先輩がいること。僕は3年目以降はこの病院にない科を選択したいと考えているので、2年間で内科と救急の基礎をしっかり見につけれる場所をえらんだ。2年間の短い時間の中で基礎を身つけるには、実際に研修医にやらせてもらえ、でもやりっぱなしで終わるような忙しすぎる病院ではなく、整理できるようなバランスの取れた病院がいいと思って選びました。

③実際にマッチングを受けた数は?
 1つ(鹿屋のみ)

④どんな試験だったか
 面接と小論文。小論文のタイトルは、「当院が地域の中核病院となりうるためにすべきこと」のような内容。面接ではアットホームな雰囲気で、志望動機や将来の夢、研修でしたい事、などを聞かれた。

⑤マッチングを受けるにあたってアドバイスを。
 僕は、二年間は冒険するべきだと思います。安全な病院より、自分が本当に行きたい病院を見つけ、挑戦してほしいと思います。安易に、行きたくない病院を下位に書くより大変だけどアンマッチにさせて落ち着いて考える時間を作るのも一つの手だと思います。
6年生はこれから卒業試験の勉強や国家試験の勉強など気持ちで焦りが出てきます。まだ比較的余裕のある8月に可能性のある病院の試験を受け、じっくりと順位を決めて下さい。

これから、忙しく大変な時期を迎える事になりますが、皆さんの希望の病院にマッチすることを祈っています。頑張って下さい!
                       大隅鹿屋病院初期研修医 1年生一同